妊娠とウィルス感染
風疹(三日はしか)・麻疹(はしか)
【風疹(三日はしか)】妊娠初期にかかると胎児に異常を起こすことがある
風疹は「三日はしか」とも呼ばれるように比較的短期間で治ってしまい,重い合併症を伴うことも少ない病気です。けれども妊娠初期に妊婦さんが風疹にかかると,赤ちゃんに「先天性風疹症候群」と呼ばれる心臓の奇形,目の白内障,難聴や発達の遅れなどを起こすことがあります。このため,妊娠初期に風疹にかからないようにすることが大事です。
ワクチン接種(予防接種:MRワクチン=麻疹風疹ワクチン)のすすめ
あなたは何年生まれでしょうか?1979年4月2日から87年10月1日までに生まれた人達は風疹ワクチンを受けていない可能性があります。なぜなら 1977年から女子中学生を対象に風疹ワクチンの接種が行われていたのですが,風疹流行の予防を目的に1994年4月からは1歳から7歳半の男女に接種対象が変更になったためです。この狭間にあたる人達はワクチン接種を受けていない可能性があります。またこの世代の年上にあたる1979年以前に生まれた方(特に男性)も風疹に対する免疫を持っていない可能性があります。最寄りの医療機関で風疹ワクチン接種の必要性について相談されることをお勧めします。最近では抗体をもたない男性が海外の流行地で風疹にかかり職場に持ち込んで他の男性や周囲の人、特に妊婦さんに移すことが目立っています。ぜひこのようなことのないよう特に海外へ仕事で行かれる方はワクチン接種をしましょう(各市町村では国の助成事業として抗体検査を実施していますので各保健所に問い合わせをしてみてください。なお保険は適応されないため検査・接種とも自費になることがあります)。
【麻疹(はしか)】妊娠中の麻疹感染は流早産を引き起こす
こどもの頃にはしかにかかった,またはワクチンを打って貰ったかどうかおわかりでしょうか?
はしかはふつう,自然回復してあまり重症にならない病気ですが、時に肺炎、中耳炎、クループ、下痢、脳炎や血小板減少などの合併症を起こすことがあります。
妊娠中にはしかに感染すると母体が重症化する率が高いといわれています。はしかにかかることで赤ちゃんの奇形が増えることはないと言われていますが、流産・早産や,お腹の中で赤ちゃんが亡くなってしまう子宮内胎児死亡・生まれた赤ちゃんが亡くなってしまう新生児死亡などが2-4倍の高率となってしまいます。
日本では麻疹抗体保有率(はしかに対する免疫を持っている人の率)が低下してきているために今後妊婦の麻疹感染の問題が増えることが心配されています。
ワクチン接種(予防接種:MRワクチン=麻疹風疹ワクチン)のすすめ
現在の日本での麻疹ワクチン摂取率は70%前後で推移していますが,これは諸外国と比べると大変低い数字です。そのため今後あらゆる年齢層での流行を引き起こす可能性があり、また妊娠中の感染が大きな問題となることが予想されています。成人の罹患は重症化しやすいともいわれ、特に妊娠の可能性がある人達には、ワクチン接種をお勧めします。最寄りの医療機関で,はしかに対する免疫状態を調べて貰って,免疫がないようであればワクチン接種をして貰いましょう(ただし,保険は適応されないため検査・接種とも自費になります)。